学生の頃から、自分のうだつの上がらなさは理解していた。何の特技もなければ、夢も根気もない。新作のゲームだけが楽しみな人間だった。
度胸もない小心者なので、平凡な人生を人に迷惑が掛からないことだけを考えて送っていくのだろう、と考えていたら、全くその通りになってしまった。
思春期から異性を意識するようにはなったが、その意識が気恥ずかしさにつながってしまい、小学生の頃は普通に喋っていた女の子とも距離を感じてしまうようになった。その気恥ずかしさが、まさか20年たった今でも続いているとは。
だから、結婚はおろか、カノジョもおろか、ガールフレンドさえ僕とは無縁のものだ。強いて言えば、性の対象はギャルゲーの中の女の子くらいのものである。
僕が何の成長もない平凡な大人になった半面、ゲームの世界は格段の進化を遂げている。こちらの想像を超えた技術の革新があり、全く飽きさせない。それもまた、僕が高校時代から全く変わらない要因なのだろう。
ただ、男性の生殖本能に基づいて、リアルでエロゲーみたいなことをしてみたいな、と思うことはある。
ふと、親から半ば強制でやらされている積立預金の残高を見ると、結構な額が溜まっていることに気付いた。実家通いでゲームにしかお金を投資していないのだから、貯金は自然と溜まる。
エロゲーの様に何人も愛人を侍らせて、ウハウハやれないものかなあ、などと妄想した時に、ネット上の愛人募集の掲示板が目に留まった。
無償でお金くれる人
そして、多種多様な書き込みを眺めていると、一人くらいなら愛人契約ができるのではないか?などと思い始めたのだ。
そこで、愛人募集をしている何人かに話を持ち掛けてみると、その内の一人から色よい返事がもらえた。
ただ、ここでちょっと冷静になって考えて、女の子とセックスはおろか、まともに喋ったことのない僕が、いくらお金での契約とは言え、果たしてまともな行為ができるのだろうか?などと不安になった。ボタンを押し続けたらそれだけでアクメに達してくれるエロゲーのキャラとは違うのだ。
まあ、あとは野となれ山となれ、と僕は愛人募集の女の子と実際に会うことにしたのだ。
結果から言うと、彼女は待ち合わせ場所にすら現れなかった。残念なような安堵したかのような複雑な気持ちになった。
そのまま、愛人募集をコンティニューするかゲームを終えるを選択するかは、まだ決めかねている。
こんな僕に三次元の愛人なんて、おこがましいにもほどがあるけどね。
パパ契約
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